【要約・解説】人新世の資本論(斎藤幸平)

書籍解説

資本主義では環境危機は止められない

では、どうすればいいのか?

「資本主義をやめなければならない」というのが筆者の主張です。

資本主義を続ける限りは環境危機を食い止めるのは無理だというのです。

一体なぜ資本主義では、環境危機を止められないのでしょうか?

その理由は、資本主義が次の2つの性質を持ち合わせていることが関係しています。

1. 負荷を環境に転化する

2. 無限の価値増殖を目指す

負荷を環境に転化する

”資本主義が負荷の側面を環境に転化している”

一体どういうことなのでしょう?

本書では、このことを示す例として「パーム油」があげられています。

パーム油といえば、酸化しにくい性質を持ち、加工食品やファーストフードなどによく用いられる油ですね。

日本人の食生活の影の主役にもなりつつあるパーム油。

どのように生産されているかご存知でしょうか?

原料となるのはアブラヤシです。

需要の拡大に伴い、今世紀に入ってからアブラヤシの栽培面積が倍増してます。

問題は、栽培面積の倍増方法。

熱帯雨林の乱開発による森林破壊が行われているとのことです。

それだけではありません。

森林伐採の影響で土壌浸食が起き、肥料や農薬が河川に流出。

その結果として、川魚が減少するといった事態が起きています。

パーム油はほんの一例に過ぎません。

我々の便利な生活の裏には、環境への負荷の押し付けがたくさん行われています。

無限の価値増殖を目指す

”資本主義は、無限の価値増殖を目指す”

いったいどういうことなのでしょう?

これは、「生産性の罠」という概念を理解すると、分かりやすいです。

資本主義の世界では、利益を出すことが求められる
↓
コストを抑えるため、労働生産性をあげようとする
↓
労働生産性があがり、より少ない人数で今までと同じ量の生産物を作れるようになる
↓
経済規模が同じであれば、失業者が生まれる
↓
失業者は生活していくことができない
失業率が高いことを政治家たちは好まない
↓
雇用を守るために、絶えず、経済規模を拡大せざるを得なくなる

不思議ですよね?

労働生産性が上がっても、我々は経済規模の拡大を目指し続ける。

これこそまさに「生産性の罠」と言われるものです。

資本主義はこの「生産性の罠」から抜け出せず、経済成長を諦めることができないという性質を持っているのです。

環境危機の本質

再び、戻ります。

なぜ資本主義では環境危機は止められないのか?

答えは、資本主義が「負荷を環境に転化しながら、無限の価値増殖を目指す」という性質を持つことに対し、「地球の資源は有限」だからです。

より簡単に言えば、資本主義では「環境への負荷が無限に続く」のに対し、「地球の資源は有限」だからです。

環境への負荷の転化が、いつか地球の限界を超えることになり、深刻な環境危機に陥ることになるのです。

これこそが環境危機の本質です。

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