【要約・解説】人新世の資本論(斎藤幸平)

書籍解説

解は「脱成長コミュニズム」

資本主義では環境危機は止められないということがご理解いただけましたでしょうか?

では、我々はどうすれば良いのでしょうか?

筆者の主張は「資本主義をやめて、脱成長コミュニズムを目指すべきだ」というものです。

どういうことなのか?

経済成長を諦める

脱成長とは、ざっくり言うと「経済成長を諦める」ということです。

  • 資本主義をやめて、経済成長を諦める?
  • どんどん衰退していって、生活が貧しくなっていくじゃないか?

そう思われるかもしれません。

でも、「そんなことはない!」というのが、筆者の主張です。

「生活が貧しくなるという欠乏感をもたらしているのは、むしろ資本主義である」と。

「資本主義をやめて、経済成長を諦めれば、我々はより潤沢な生活を享受できるようになる」と。

どういうことなのか?

欠乏感の原因は資本主義

土地や水を例にあげて考えてみましょう。

資本主義以前のことを考えてみると、土地や水は誰のものでもありません。

その共同体の構成員であれば、誰でも無償で、必要に応じて利用できるものでした。

人々に開かれた無償の共有財だったのです。

筆者はこのような無償の共有財、万人にとって有用で不可欠なものを「コモン」と呼んでいます。

そして「資本主義は、潤沢にあったはずのコモンが解体され、希少性が生み出されたことによって生まれた」と言います。

仕組みはこうです。

潤沢にあったコモンが一部の人の所有物となる
↓
コモンが一部の人にしかアクセスできない希少なものになる
↓
他の大多数の人たちはコモンを利用するのに利用料を支払う必要がある
↓
利用料を支払うのにお金が必要になる
↓
労働する必要がある

結果生まれるのが、「資本を独占する資本家」と「搾取される労働者」

まさに資本主義の構図ですよね。

潤沢にあったものを、一部の人にしかアクセスできないものにし、人工的に希少なものにする。

土地や水に限らず、様々なもので同じことが起きています。

確かに1%の資本家の生活は豊かになったかもしれません。

でも、残りの99%の人の生活は欠乏感溢れる貧しいものになっていますよね。

このことから欠乏感を生み出しているのは、資本主義だと言えるわけです。

コミュニズムでコモンを取り戻そう!

最後に、我々が目指すべき「脱成長コミュニズム」の”コミュニズム”について見ていきましょう。

コミュニズムと聞くと、なんだか難しそうで、アレルギー反応が起きそうですね笑。

でも、ここまでの流れが理解できていれば、決して難しいものではありません。

要は、資本主義が生まれる前の、コモンを共同で管理する社会に戻ろうということです。

コモンとは、「土地や水など、万人にとって有用で不可欠な共有財」のことでしたね。

そして、コミュニズムとは「全員でコモンを共同管理する社会」のこと。

資本主義は、潤沢にあったはずのコモンを、誰かの所有物にし、希少化することによって生まれました。

だから資本主義をやめて、再びコモンを全員で管理する社会に戻れば、全員が潤沢なコモンを享受できるようになるというわけです。

まとめ

いやー、ここまで非常に長い道のりでした。。

多岐にわたる内容を扱ってきたので、ざっとまとめておきましょう。

人新世の時代において、我々は深刻な環境危機の問題に直面している

資本主義を続けている限り、環境危機の問題を解決することは不可能

解決するには、資本主義をやめ、脱成長の社会を目指すしかない

「資本主義をやめて脱成長」=「貧しい生活」を思い浮かべるかもしれない

でも、コモンを希少化し、貧しさを生み出していたのは、むしろ資本主義社会である

資本主義を捨てて、脱成長コミュニズムの社会を実現すれば、環境危機の問題を解決し、全員が潤沢なコモンを享受できる

かなりざっとまとめました笑。

筆者は、環境危機の問題に対して、「脱成長コミュニズム社会の実現」という答えを提示してくれました。

みなさん、どう思われましたか?

  • そんなもの、ただの理想論だ!
  • どうすれば、その社会を実現できるんだ?
  • じゃあ、私は何をすればいいのか?

肯定意見、否定意見、さまざまな意見があることかと思います。

でも、筆者の斎藤氏ほど、環境危機の問題を深刻に捉え、解決策を考え抜いている方は少ないのではないでしょうか?

我々も真剣に環境危機の問題について、考えていかなければなりません。

その結果、斎藤氏と違う結論にたどり着くことになっても、それはそれで良いと思っています。

本書『人新世の資本論』は、環境問題、資本主義の本質について、考えさせられる非常に面白い一冊でした。

興味がある方は、ぜひ一度手にとってお読みいただければと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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